⑤ワンルームマンションで茶事をするために頭をひねったこと。

2匹の猫とともに寝起きし、空腹を満たし、グータラ過ごしているこのザ・生活空間であるワンルームマンションで茶事をしようと思い立ったとき、頭をよぎったのは「はたして格好がつくんだろうか」ということだった。
別に格好つけたいわけじゃなくて(どっちだ)、ようするに、なんというか。
……ちゃんと茶事っぽくなるのかなぁ!? という不安。

このワンルームマンションは、猫たちがうちに来てからというものの、もはや猫小屋なのだ。
私が猫小屋で寝起きしているのだ。
まぁたとえそうでなかったとしても、毎朝自分が寝ぐせだらけのボンバーヘアでパジャマのまま歯を磨いているような場所で濃茶を立ててよいのだろうか、という戸惑いはあっただろう。
茶事は清浄な空間でするものだ。
だから特別で、非日常的で、お稽古に行くとリフレッシュできるのだ。
生活と結びついていないから。

だがしかし、この猫小屋でやると決めたのだからやりましょう。
というわけで、工夫したこと。

とにかくメリハリをつける。

茶道は陰陽五行の影響を受けているという。
茶事では最初、すだれを下げて部屋を暗くしているけれど、濃茶がはじまったところでそれを上げる。
陰から陽へ変わる。
実は今回、自宅で茶事をするにあたって、家でやるからってあまりにも形を崩してはいけないだろうと思い、陰陽五行説のお勉強を少ししてみた。
YouTubeで何本か解説動画を見ただけですが。
そして思ったこと。

ようするにメリハリってことなんじゃない!?

陰と陽とかはちょっと理解が及ばなくてアレなんですが、まぁだいたいそんなところなのでは納得した。
黒の次は白にしなさいよ、上の次は下にしなさいよってことだろう、きっと。うん。


というわけで、工夫その①
濃茶と薄茶で盆を変える。

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濃茶は無印良品のトレーを使った。
横長に大きいので、平点前に近い点前をすることができた。
運び出すときも茶碗と茶入れを縦ではなく横に並べて。
いっぽう、薄茶は千歳盆の蓋を使用。

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工夫その②
茶杓の材を変える。
濃茶は竹、薄茶は木材(梅)にした。

工夫その③
袱紗を変える。
濃茶は朱色の無地、薄茶は薄いピンクの柄物。
の、つもりだったんだけど、忘れちゃったのよぉ~悔しい~!
子供のころから運動会の予行練習とか大っ嫌いで、大学の卒業式のリハーサルはサボって当日に履くパンプスを三宮に買いに行ったくらいだったのだけど、大事だったんだなと反省した36歳の春。
予行練習は大事。
当日のとおりに前もって体を動かすことには意味があるのだ。

メリハリとはまたちょっと違うけど、ほかにも気にしたことがある。
それは、全体的にちょこっと格を下げること。

この家で茶事をしても格好がつかないんじゃないか、という不安があったので、そもそも格好をつけないことにした。
たとえば、この猫小屋でパーティをしますと案内状を出して、イブニングドレスで来られたら困る。
いくらお高いワインとバカラのグラスを用意しておいたところで、イブニングドレスはさすがに気まずい。

そう。
この気まずさこそが格好がつかないという不安の素なのではないか。

格を下げるためにしたことその①
濃茶碗にワンポイントものを使う。

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濃茶といえば楽、もしくは無地のお茶碗だが、ぽってりしたお腹が魅力的な雄鶏の絵柄の茶碗を使った。
この生活感あふれる部屋で、振り返ればこたつと三つ折りになった布団が丸見えの場所でする茶事で、清閑で重厚な黒楽を使うところを想像するとなんだか背中がむずむずしてくる。
黒楽はイブニングドレスなのだ。

格を下げるためにしたことその②とその③
木材の茶杓を使う。柄物の袱紗を使う。
これはメリハリの項とかぶるので省略。
全体的に格をちょこっと落とすと、茶事で100均の器も使いやすい。


薄茶の主茶碗は大好きな鳥獣戯画にした。
楽し気なうさぎさん。
棗は鶏頭蒔絵で濃茶の主茶碗とのつながりを意識。

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段ボールを見つけたら掘り返すのが使命のエル君。

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