④茶事、振り返り

掃除しても掃除してもラグに寄る猫たち。
当日の正午の図。
はたして掃除の意味とは……。
こうして猫はかわいい顔ではじめての茶事にテンパっている私に無力感を与えるのだ。

ラグの上にあったこたつは右側の寝室エリアに移動した。
布団も三つ折りにして部屋の隅へ。

f:id:nekotochaji:20220308153834j:image和室がないので、こたつとセットで使っているこのモフモフのラグの上で茶事をすることに。
短辺のほうに正客末客とお二人座ってもらう。

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一番悩んだのは火をどうするかだったが、結局ポットにした。
でもポットにするとどうしても簡易になりすぎてしまうので、ここが次回からの課題。
とはいえ、電気だとコードが見えてなんだかなぁな感じだし、なにより洋室のワンルームにはたとえ電気であろうと炉も風炉もちぐはぐで似合わない感じがする。
多くの人が洋室で茶事をしようと思わない理由はここにあるのかもしれない。

ポットを使うので、点前は濃茶も薄茶も盆略にした。
盆略にすると水差しや柄杓など道具が減るので、一番簡単に茶事をはじめることができると思う。
とはいえ、濃茶と薄茶でメリハリをつけたかったので、濃茶では無印の長方形のトレイを使い、薄茶は千歳盆の蓋を使った。
菓子茶事(飯後の茶事)では続き薄が一般的らしいので、茶入れ、茶杓、仕服を拝見に出した後、それを正客でとめておいてもらって、建水だけ残して一度下がって薄茶の干菓子を持ってくるという形の続き薄にした。

当日台所に貼った進行表。

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会記。
赤字は先生にお聞きした訂正点。
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本床がない場合は床のみでいい。
会記は飾らない。帰りにお渡しする。
(飾るのは大寄席のお茶会のみ)

 

小吸物椀

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(箸先を落とす)
食材は卵豆腐(柚子胡椒を載せた)、ほうれん草、カニカマ、しめじ。
味付けは白だし
煮物椀より軽めを意識して作った。


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主菓子はレトルトのぜんざい。
菓子茶事(飯後の茶事)の主菓子は蓋物で出すのが一般的らしい。(そうなの~!?)

汲み出しに使った小さい器はセリアで買ったお気に入りのユニコーン🦄໒꒱· ゚
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初めて拙宅の茶事に来ていただいたので、紅白なます
ツボツボ代わりに、汲み出しの器とお揃いの小皿を使った。これもお気に入り。
これを使いたかったので、大根と人参をキューブ型にした。
すし酢と白だしに1週間漬ける。

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濃茶は主茶碗の銘「國家康」に合わせて西条園の「神護の昔」。
薄茶は主茶碗が鳥獣戯画なので、楽しげな雰囲気のある一保堂の「三笑の白」を選んだのだが、「三笑」というの虎渓三笑という故事に由来するらしい。
簡単にいうと、3人の男性が笑いあっている様。
亭主、客、合わせて3人の茶会だったので、まさかのミラクルヒット。
一保堂は包装がおしゃれ!
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会記の添削を邪魔するエルくん。

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2匹に増えた。
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③茶事終了。

花入れが水漏れしてて、お花を飾れなかった。

飾る予定だったソラマメとえんどう豆の花を食べる猫たち。

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見事につるっぱげ。

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お客様の座ってた場所の匂いを嗅ぐビビちゃん。

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自分の匂いをつけるビビちゃん。

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②猫のいる家で茶事の準備をするとこうなる

茶事の準備をする中で一番困ったのは、なんといってもスペースがないことだった。
うちには猫がいる。
猫のいる場所に道具は出してはおけない。
茶碗を置いておこうものなら遊んで転がすし、箱の紐はかじられてしまう。

幸いなことに、うちはワンルームとはいえ、玄関を入ってすぐの風呂場+トイレのエリアとリビングエリアのあいだにドアがあり、区切られている。
外出するときはそこを閉めて出かけるので、猫の脱走を心配しなくていい。
うちで猫を締め出せるのは風呂場とトイレだけなのだ。

というわけで、道具類を全部トイレに持ち込んだ。
お道具をトイレに置くなんて!と怒られるかもしれないが、他にやりようがないのだからしょうがない。

道具類はクローゼットの一番上の棚にしまってある。
私は背が低いので、ピアノの椅子に乗ってようやく手が届くといった感じ。
私がそこにピアノの椅子を持ってくると、いつも猫が先に飛び乗ってしまう。
「どいてねー」といって、椅子に立ち、棚を除き、道具を下す。
茶碗と、茶杓と、棗と……。
抱えられるだけ抱えていったん床におり、箱を床に置く。
そのあいだにエル君が椅子へ飛び乗る。

開け放たれた棚をじっと見上げるエル君。
(まさか?)
戦闘態勢に入るエル君
(まさか、まさか?)
ジャーーーーンプッ!!!!!
棚に両手をひっかけ、なんとかよじ登ろうと足をばたつかせるエル君!
「うっそぉ!? ちょっと! やめて!」

足を大暴れさせているエル君の両脇をはさんでなんとか下ろした。

 

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びっくり、という顔のエル君。
びっくりしたのはこっちだわ。
上がるのはいいけど下りれんだろ。

茶事の数日前のトイレの様子。

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①はじめて自宅で茶事をする。そのための準備中。

 うちで茶事をする、ということを考えたことがなかったわけではないけど、なんとなく現実的ではないと思っていた。
 いつも茶室で稽古をしているから、茶室以外の場所でお点前をするためには越えなければならないハードルがたくさん存在する。
「和室、ありませんけど?」とか「待合にする部屋もありませんけど?」とか「ダイニングテーブルすらありませんけど?」とか。
 ハードルを越えようにも考えるためにはエネルギーがいる。ようするに、面倒くさがっていたのだ。
 茶室さえ与えられれば茶事ができる。でも、ない。だからやらない。

 そんな私の気が変わった。
 ひょっとしたらできるんじゃないか、考えるだけ考えてみようと思った。
 きっかけは岡本浩一先生の講演を聴いたことだった。
 たいした期待もせず(失礼)、ほとんど義務的に参加した講演だったのだが(ほんと失礼)、思いの外、感銘を受けた。
 岡本先生は社会心理学者で大学で教鞭を執られている方らしいが、それも知らない。ダレソレ状態で聴いていた。
 大学で心理学を学んでいた私には、考え方が合っていたのかもしれない。
 1時間強お話を聴いていたと思うが、一番、私の心に残ったのは次の部分だった。
「侘び寂びというのは、身の丈に合うよう工夫をすることだ」
 ………本当にこう言ったかな~。
 今となってはかなり曖昧!
 だいぶ自分の言葉になおしている気がする。
 でも! でも!
 少なくとも私はそう咀嚼した。
 そして、「あー、そっかあ」と思いながらZOOMの退出するのボタンを押した(何を隠そう、ZOOM講座だったのだ)。

 それから一週間ほど、ぐるぐる考えた。
 できるかなあ?
 できないとしたら、どうだからできない?
 じゃあ、どうだったらできる?

 一週間後のお稽古のときに、師匠に心のうちを話してみた。
 岡本先生の講演に思いの外(だから、失礼)感銘を受けたこと。
 自分の家でお茶事をするとしたらどうなんだろうと、考えを巡らせていること。

「あなた、やりなさい!」

 師匠にそう背中を押され、「よし、やろう!」と決めた。
 が、私は既成事実をつくるために口に出したのだと、今は思う。
 師匠なら背中を押してくれると知っていたのだ。

 それから半年。
 お茶事は今週末に迫っている。
 飯後の茶事にしたので、昨日は小吸物椀と菓子椀をためしにつくっていた。
 といっても、菓子椀のぜんざいはレトルト。
 ぜんざいのパウチをお湯で暖めながら中に入れるお餅を焼いて……としているときに、「しまった。小吸物椀のほうを先に出すんだからこっちから先にやれば良かった」と後悔する。
 台所はもう、ひっちゃかめっちゃか。
 急に焦ってきて、「1日よ、24時間から36時間に伸びろ!」と念じる次第。

 はたして無事に終わるのか。
 決戦は土曜日。 

 

 現在の台所の様子。
 漆器を乾かし中。

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 お椀は茶事に使う物ではなく、母親の実家から持ってきた偽物の漆器。おそらくプラスチック。
 昔は自宅で法事とかしてたから、こういうものがたくさんあった。ありがたい。
 猫にいじられるので、風呂場に避難させている。

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 もぐりこんだ布団からなかなか出てこなかった今朝のエル君。

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